戦争映画

”全体主義”と”利己主義”の静かな戦いを描く戦争映画「 戦場にかける橋 」

第2次世界大戦最中の1942年、インド洋に制海権の無い日本軍は海上輸送の危険を避けビルマ戦線の物資輸送を確保するため”泰緬鐵道”の建設を決定しました。

ルートはタイ・バンコク~ミャンマー・ヤンゴンまでです。建設時最大の難所である”クウェー川”にかける橋を建設した実話を元にした映画で す。原作小説はピエール・ブール著”戦場にかける橋”(The Bridge over the River Kwaiハヤカワ文庫NVフ15-1)です。

原作者ピエール氏は実際に日本軍に捕虜となり橋の建設に参加、その時の体験を小説にしたようです。ピエール氏 は他にも”猿の惑星”の原作も執筆してます。実際の建設は熾烈を極め、(食料不足からくる栄養失調やコレラ、マラリアなどにより、連合軍捕虜6.2万人の うち1.2万人が死亡)後年「死の鉄道」と呼ばれました。完成後も執拗な連合軍の爆撃により何度も破壊されましたが、その度に修理され連合軍は物資輸送を 止めれませんでした。

現在は鉄橋に掛け替えられましたが、実際に徒歩や列車に乗ってわたることもできます。79年には2両のC56蒸気機関車が”クウェー川”より里帰りして、大井川鉄道で今も走っています。

戦場にかける橋 のあらすじ

タ イのクウェー川畔にある捕虜収容所に橋を建設するため、ニコルスン大尉が責任者を努めるイギリス軍捕虜が移送されてきた。収容所所長である斎藤大尉から

「工事が軍上層部計画よりはるかに遅れているためにあと三カ月で橋を完成させなければならず、そのためにはたとえ将校といえど労役に就かなければならない。 」

と宣言された。ジュネーブ条約を盾に将校の労役を拒否するニコルソン大尉だが、斎藤大佐は労役に向かわないと射殺しろと部下に命令する。一歩も引かないニ コルスン大尉、射殺寸前のところをクリプトン軍医の猛抗議に救われる。一命はとりとめたものの、炎天下日没まで直立不動で立たされたのち”オーブン”と呼 ばれる重営倉に監禁された。その夜アメリカ軍人シアーズ中佐率いるグループが脱獄を強行、メンバー全員射殺されたが、シアーズ中佐のみ奇跡的にイギリス軍 に救助された。

これより物語は二つの視点で展開される。一つはニコルススン大尉。斎藤大尉は橋を期日までに完成させるために病床に伏せって いる捕虜も動員し工事を強行しようとしていた。ニコルソン大尉は冷静にいくつかの問題点を指摘した。地盤が悪くこのままでは完成後列車の重量に橋が耐えき れず、橋が倒壊する恐れがあること。橋の設計自体が稚拙であること。イギリス人捕虜には橋梁設計工事の専門家がおり、総ての設計工事ができること。

イギリ ス人である自分が指揮をとれば士気が上がり、納期に間に合うこと。日本兵も工事に参加すれば、ライバル意識が生まれより効率が上がることなど。工期に間に 合なければ自決も辞さない斎藤大尉は、ニコルソン大尉に賭けるのだった。

ニコルスン大尉を監督とし着々と工事は進んでいく。捕虜とはいえ橋 梁のプロフェショナルな仕事ぶりは斎藤大尉も認めざるを得なかった。徐々に捕虜の待遇も改善され、また捕虜たちに生きる目的意識が芽生えはじめたのであっ た。ニコルスン大尉も部下たちにイギリス軍人として誇りを持って作業にあたらせ、サボタージュは一切ゆるさなかった。

一方捕虜収容所から生 還したシアーズ中佐は、階級詐称が問題となり窮地に立たされていた。選択は一つ。イギリス軍に転籍しクウェー川橋を爆破する作戦に参加することだった。そ うすれば階級詐称は不問、さらに二等水兵から少佐に特進できるのである。作戦はパラシュートで山中に降下、タイ人の協力者と合流、作戦物資を人力で移送し 橋に爆薬を仕掛け破壊するのだ。作戦は困難を極めた。4人のメンバーのうち一人はパラシュート降下中に死亡し、もう1人は日本軍と交戦中に足を負傷してし まう。クウェー川を見下ろせる山中に到着した一行は目を疑った。脱走前あれほど困難を極めた橋が完成しているのだった。

橋を破壊するため橋脚に爆薬を仕掛 けるシアーズ中佐だが・・・

戦場にかける橋 のみどころ

二つの立場の対立を描いた作品です。戦争映画レビューで”対立を描いた”と書くと、日本軍と連合軍、捕虜と軍隊、建設と破壊などが思い浮かびます。戦場にかける橋も、もちろんこのような対立を描いてはいるのですが、やは り注目すべきはニコルスンの”全体主義”とシアーズの”利己主義”の対立だと思います。

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ニコスンが部下の待遇改善のため、イギリス人の有能 さを証明するために橋を建設するのに対し、シアーズは自分の待遇改善のため階級詐称を行い、自分が生き残るため脱走もして、階級詐称が原因で橋を破壊せざ るを得なくなり、クウェー川にもどってきます。こう書くと自己犠牲のニコルスンは”善”利己主義のシアーズは”悪”です。勧善懲悪な映画では”善”である ニコルスンが勝利を納めるのでしょうが、ラストはかなりの驚きです。松本零士氏の”戦場まんがシリーズ”と同じような重い結末を迎えます。登場人物で”狂言廻し”的な役であるクリプトン軍医の最後のセリフ「madness・・・」が象徴しています。

一方、利害が一致し橋を建設する目標に邁進する、斎藤とニコルスンの奇妙な友情も見どころです。映画の中盤まではお互いに殺意を抱いていたふたりが、ラスト近くで自分の人生を語りあったりします。ここでの”対立”は徐々に解消され”戦友”となって行く過程も注目です。

小学校の運動会でよく聞いた行進曲が、この映画のテーマ曲だとは知りませんでした。捕虜が行進した時と同じ曲で行進していたんですよ、、

(文章・取材:こんちゃん)

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