戦争映画

「 縞模様のパジャマの少年 」は、ただ絶望的な感覚に襲われる戦争映画

「 縞模様のパジャマの少年 」は、ただ絶望的な感覚に襲われる戦争映画

ホロコーストに関する物語や映画はたくさん作られています。どれも見ていてつらくなるものばかりですが、「縞模様のパジャマの少年」も例外ではありません。主人公が子供なので、余計に苦しくなります。しかし、だからこそ見ておくべき戦争映画です。

「縞模様のパジャマの少年」は、第二次世界大戦中の、ナチス政権下のドイツでの物語です。「多くの人に見てもらうには、英語で作ることがふさわしい」という監督の考えのもと、ドイツ語は使われていません。

「 縞模様のパジャマの少年 」のストーリー背景はホロコースト

主人公である少年ブルーノは、ナチの軍人を父に持ち、裕福な生活を送っています。引っ越し先で退屈な日々を送っていた頃、強制収容所に入れられている同い年の少年シュムエルに、ブルーノはフェンス越しに出会います。そこから悲劇が始まる、やるせない物語です。

この戦争映画の背景となっているのはホロコーストです。ユダヤ人というだけで収容所に送られ、死ぬまで働かされるか、あるいはガス室で殺されるか。痛ましいどころか、信じられないような残虐さですが、事実であり、その上1世紀も経っていないような最近のことでもあります。600万人ものユダヤ人がホロコーストによって殺害されました。収容所では、残酷な人体実験も行われていました。

主人公ブルーノは、父の仕事を何も知らない……

主人公の少年ブルーノは、ナチの軍人である父と、母と、姉と四人家族です。ベルリンで、豪邸に住み、裕福な生活を送っています。ある時、父親が転勤することになり、家族で引っ越すことになります。

引っ越し先は、近くに人家もないような寂しい場所でした。友達などできるはずもなく、ブルーノは孤独な日々を送る羽目になります。ブルーノは知るよしもありませんが、父は強制収容所で働くことになったのです。

ブルーノは探検と称して出掛け、その先で収容所のフェンスを見つけます。そして、フェンス越しに、ユダヤ人の少年シュムエルに出会います。シュムエルは縞模様のパジャマを着ていました。収容所に入れられていた人たちが着させられていた囚人服ですが、ブルーノはそれが何かわかっておらず、パジャマだと思い込んでいます。ブルーノは父親が残虐な仕事をしているなど夢にも思っていないのです。

二人はフェンス越しという奇妙な状況の中で、友情を育むようになります。

「 縞模様のパジャマの少年 」は戦争映画ですが、戦闘シーンや残虐なシーンはまったく出てきません。それなのに、この映画はずっと不気味で、怖いことこの上ないのです。PG12指定だったそうですが、そうせざるを得ないでしょう。

二人の友情を引き裂く「二人の死」

「縞模様のパジャマの少年」を見終えた人は、大変なショックを受けているでしょう。子供が主人公だし、ブルーノもシュムエルも助かるだろうと思って観ていた筆者も、ラストシーンの画面の前でひたすら呆然としていました。

二人の友情が、二人を死に導くなど誰が考えたことでしょう。そして、「 縞模様のパジャマの少年 」というタイトルの意味がじわじわと胸に迫ります。それはシュムエルだけでなく、フェンスをくぐったブルーノのことでもあったのです。

原作小説があったので読んでみたところ、最後に訳者による解説がついていました。それによると、この物語は「ありえないこと」なのだそうです。

まず、強制収容所につれていかれたユダヤ人たちは、労働ができる者かそうでない者かに分けられました。労働のできない子供や、老人は、真っ先にガス室送りにされてしまいました。それ以外の、労働に耐えうると判断された人たちは、死ぬまで働かされることになりました。だから、少年であるシュムエルが収容所の中で生き延びたはずはないというのです。

また、シュムエルはフェンスのすぐそばに来て、フェンス越しにブルーノと話したりボードゲームをしたりします。しかし、実際には、フェンスに近づくことは死を意味していました。脱走をはかってフェンスに近づいた人は、見張りの兵に銃撃されました。さらに、フェンスには高圧電流が流れており、触ればすぐに死んでしまうのです。フェンスに向かって走る、ということは、自殺を意味していたそうです。

この解説を読むと、少しは安心すると思います。この恐ろしい戦争映画は、完全なフィクションなのだと。しかし、なんの罪もない人たちが虐殺された事実は変わりません。フィクションだから、と安心したところから、本当の考察が始まるのではないでしょうか。

縞模様のパジャマの少年

「あり得ない設定」でこの映画が作られたのはなぜなのか?

なぜ、この「ありえない設定の戦争映画」が作られたのでしょう。「 縞模様のパジャマの少年 」を画面の前で観ている人は、常に安全な立場にいます。

戦時下にも、戦地にもいません。ブルーノもそうだったはずなのです。彼はナチス側の、安全な立場の人間だったはずです。

そのブルーノがガス室に行くことになったとき、観客である私たちも、映画の中に引きずり込まれるのです。戦争は人ごとではないのだと、戦争や迫害の中で、本当に安全な人などどこにもいないのだと思い知ります。

観て幸せな気持ちになれる映画ではまったくありません。トラウマになると言っても過言ではないでしょう。それでも、多くの人に観られるべき戦争映画です。

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