皆さんは覚えているだろうか?数年前のおもちゃイベントのマルイブースで89式小銃発売のポスターが貼られていた事を。その後マルイ側からのリリースはピ タリと止んでしまい、数多くある『ボツ』の道を歩んだかに思えた89式小銃だったが終に発売へと相成った。個人的には大いに期待していたモデルだけに感動 も倍増。早速ネットで予約注文を引き受けてくれる所を探した。関西にある大手のショップで受付を始めていたので、早速予約をしておいた。今回はなんとして も発売日に入手する必要がある。が、予約エントリーをした日は6月23日、発売まで既に3週間を切っていた。予約順位もかなり微妙な感じだったが、ここは マイペンライの心で望むしかない。
発売日当日の7月13日、朝早くからメールをチェックするもメールが来てる筈もなく悶々と半日を過す。午後、メールブラウザを開きぱなっしで仕事をするも 入荷のメールはまだ来ない。『電話すればいいじゃん』とお思いだろうが、小生はとても気が小さく、どちらかと言えば引き篭もり系なので電話でのお話は極力 避ける傾向にある。そして19時過ぎ、諦めかけたその時、ようやく『89式小銃発送のお知らせ。』とのメールが来た。メールが来れば今までの悶々はウソのように消えてなくなり、明日の到着に備えて撮影準備などを始める事にした。
日本国89式5.56mm小銃
89式5.56mm小銃 | ||
設計・製造 | 豊和工業 | |
口径 | 5.56mm | |
銃身長 | 420mm | |
ライフリング | 6条右回り | |
使用弾薬 | 5.56mm×45 | |
装弾数 | 30・20(20発弾倉使用時) | |
作動方式 | ガス直圧作動、ターンロックボルト | |
全長 | 916mm | |
重量 | 3,500g | |
発射速度 | 最大約850発/分 | |
銃口初速 | 920m/s | |
有効射程 | 500m |
1970年代後半から、世界の小銃の主流は小口径高速弾を使用するものが主流を占めるようになっていった。そこで自衛隊でも六四式小銃(7.62mm)の 後継小銃が開発される事になる。当然、自由主義諸国との共通項である5.56mm使用を主軸としての設計である。設計、開発は自動小銃の製造メーカーであ る豊和工業が担当する事となった。豊和工業は試行錯誤の結果、生産経験のあるAR-18を基本設計に取り入れ日本人の体格にあった小銃を設計。これが 1989年に正式採用される事になっ
た89式5.56mm小銃である。89式5.56mm小銃は六四式小銃の後継として、
- 口径の小型高速化/共通化(7.62mmから5.56mm)
- 構成部品点数の減少
- M16/M4系統のマガジン共有化
- 大幅な軽量化
これらの点が改良されている。しかし六四式小銃の特徴であるバイポット(2脚)と軍用小銃の必須装置である着剣装置も健在で、89式5.56mm小銃にも装備されている。
少々余談ではあるが、89式5.56mm小銃は資料や写真などを見るとプレス加工やロストワックス加工が施され、他国の軍用小銃に負けないくらい軍用銃らしいデザインをしている。しかしコストの方は国内の諸事情で大量生産が出来ない現状から多くの製造工程はハンドメイドで製造されている。その為、外見からは想像できない程、軍用小銃としてはかなりの高額で納入されている。
こんな高額な89式5.56mm小銃も単年度の調達数の少なさから全部隊に配備されるのが遅々として進んでいないのが実情で、防衛庁も近年、89式 5.56mm小銃の調達数を倍増させて配備に当てている。また、近年では自衛隊部隊だけでなく、警察の一部部隊や海上保安庁にも配備されている。
閉所戦闘訓練用教材
銃器の管理が非常に厳しい自衛隊では、銃器を使用した隊員の自主的な訓練などは非常に難しく、また、建物内での銃撃訓練や射撃行動訓練なども実銃の89式5.56mm小銃を利用する事は大変困難だった。
そこで防衛庁は、当時マルイが製作進行中だった89式小銃に目を付け、隊員の閉所戦闘訓練用に調達する条件で89式5.56mm小銃の詳細なデーターの引渡 しが行われたとされている。これらのデータを元に製造されたマルイ電動89式小銃は、実際に『閉所戦闘訓練用教材』として調達が行われ、2006年3月末 の時点で各種保守部品を含む600丁が導入されており、1丁当たりの調達価格は約8万円といわれている。正式名称は「89式小銃型訓練用電動エアガン」と して各地の駐屯地に配備されている。しかし、補修部品や武器課への指導不足(当然いままで電動ガンなど配備されていないのだから仕方ないのだが)により、 『万が一故障した場合のメンテが出来ない』と訓練での使用を躊躇っている部隊もあるとか・・・。
発売までいろいろな噂が飛び交ったが、現実、『閉所戦闘訓練用教材』と正式に予算を計上して調達した訳だから、小銃についてなんらかのデータのやり 取りがあったと考えるのが自然だと思う。その結果、よりリアルな電動89式小銃が完成し、私達がその恩恵に与る事が出来たのはとてもラッキーだったと言え るだろう。防衛庁が民間への販売を拒めば、今回の発売は100%実現しなかったし、マイルが防衛庁との契約時に『民間への販売許諾』の一文を入れた事はま ず間違いない。マルイには感謝感謝。
ただ、自衛隊がリアルな市街戦闘を想定して訓練しなけばならない程、日本国内に不穏な空気が流れているのは何とも複雑な気分ではある。
重厚なデティールに興奮
さあ、早速防衛庁調達の実力を見てみよう。箱を開けてまず目に入るのは化粧ケース。これは前回は発売された電動M−14と同様に箱がショーケースに流用で きる設計になっているのだが、なんと言っていいのかとても高級感溢れる仕様になっている。陸自迷彩のキャンバスがとてもいい感じ。説明書も自衛隊の教本を イメージして製作されていて雰囲気は十分だった。最近のマルイ製品はこういった商品価値を高める戦略がとても上手い。
フレームは公式アナウンスの通り、ノーマルでメタルフレームを採用している。この質感は見ているだけで重厚感が伝わってくる。主要な構成パーツもメ タルパーツである為、全体に『金属で出来た小銃』感は十二分だ。モデルガンでも十分に通用する質感ではある。手にとってみると、やはり重い。ズッシリとし た重みが伝わってくる。
フレームにはツヤ消し黒塗装が施され、 実銃より黒味が強い。実銃89式5.56mm小銃はパーカーなのだろうか?もっと銀色に近い。プラのハンドガードやストックといった黒色プラパーツとフ レームの銀色といったコラボが実銃89式5.56mm小銃の雰囲気を強くしていると思うのだが、電動89式は全体が黒味で実銃より重厚な感じがする。 ひょっとしたらホンモノより重いんじゃないか?と錯覚する位である。実際は本体だけなら若干電動89式小銃の方が軽いのだが、見た目の印象で随分とイメー ジは変わる。
フレームに刻印されているのはおなじみの『ア・タ・レ』と89式5.56mm小銃で追加された3点バーストの『3』の刻印が。『89式5.56mm小銃』のネームと共に自衛隊装備品の証でもある『桜にWマーク』もしっかりと打刻されている。
小銃を構えるとメタルフレームのおかげでバレルの歪みが殆ど発生していない。かなりキツくハンドガートを握り締めても同様だった。これはM-14並 みの命中精度も期待できるに違いない。ただ、バイボットの重量分が若干フロントヘビーになっているので、連続して射撃をする場合、特にサバゲーユーザーに はちょっと体力的につらいかもしれない。また今後、サイレンサーやフロント回りなどのパーツを追加する場合は更に重量が増すので要注意。まあそこは基礎体 力を付けてカバーするしかない。リアサイトは実銃89式5.56mm小銃と同様に作動する。もちろんこれもメタルパーツで構成されている。これは固体差か もしれないが、目盛りの文字が若干潰れていてとても見難い。
小銃を構えた感触はまさに『体にフィットする』がぴったりで、M4やM16とは違う感覚だ。特に肩へのフィット感が他の小銃とはまったく異なる。まさに日本人の体型を考慮して設計されているだけの事はある。
ストックは実銃89式5.56mm小銃と同様左右非対称で、今回は固定銃床式モデルが発売されている。ただ、固定式ストックなのにバッテリーはハンドガード 内に収納するタイプ、いわゆる『ウナギバッテリー』を使用するモデルである。これは今後、とても近い内に、生産ラインを変える事が無いくらい早い時期に折 曲銃床式モデルが発売されると予感させる仕様である。一応、この固定式ストックには予備バッテリーが収納できる様になっている。 固定式ストックならミニ バッテリー入りそうなものだが、この左右非対称のストックを形成する段階でスペースの確保が難しかったのだろう。サバゲーで多弾数マガジンを利用してのバ ラ撒きユーザーには厳しい仕様かもしれない。
マガジンはこの 89式小銃で新たな機能が追加されている。従来のマガジンは必ず2−3発撃ち出されないBB弾が残り、マガジンを抜いたときに『ポロリ』と情けなく下に落 ちていた。この『ポロリ』が解消され、全弾撃ち尽くす事が出来るようになった。こういった改良はメーカーのやる気をとても感じる。
早速フィールドで実射
ステッィクバッテリーの充電が終わると早速試し撃ちに出かけた。ノーマルマガジンにBB弾を装填し本体に差し込む。この時、M-4シリースとは違って、真 下から垂直に差し込まないとマガジンは本体になかなかセットされない。ついクセで前方なから斜めに装填しようとしまうと上手く入らないので注意。
まずはセレクターを『タ』にセットしてセミオート射撃をしてみる。『パンッ』ととても『キレ』のよい反応だ。従来の製品よりもタイトに反応している ようだ。続けて『レ』のフルオート射撃。『スポポポッ』とM-4よりは若干遅いサイクルで発射されている。射撃している本人にはギヤやモーターの駆動音が 本体を伝って結構大きな機械音がしているのだが、横に立ってカメラを構えている人間にはとても静からしい。フレームの機密性が従来の製品よりも上がってい るのだろうか?
試し撃ちをしてみた所、やはりマルイの製品だけあってフル・セミ両方とも快調に作動している。このあたりの品質はマルイだけにとても安定している。次はいよいよ新機能である3点機械式バーストを試してみる。
新搭載の3点機械式バーストシステム
今回は防衛庁が閉所戦闘訓練用教材として調達した事で今までの電動ガンシリーズより一線を越えた製品になっているのだが、もう一つ、マルイの意欲が見れる 新機能がこの89式小銃には搭載されている。それは3点機械式バースト装置だ。これは実銃89式5.56mm小銃をリアルに再現するのには必要な機
能では あったが、かつてSIGシリーズで試験的に搭載されていた電圧を変えて射数をコントロールするの搭載したのではなく、89式小銃ではギアをコントロールし て機械式に3点バースト射撃を行う方式を採用、搭載した。
早速、3点バーストを試してみたが、当然ではあるがキチッと3点射撃を再現している。心なしかセミ・オートも従来の製品より『キレ』が良い様に感じた。連 続して3点バーストで射撃してみたが確実に射間が『キレ』、タイミングのズレも発生しなかった。これは今後、マルイ製品の新機軸となる機能の一つになるだろ う。
気になった問題点
正直、問題といえるような点は無かった。まあ今後、ゲームなどで使い込んでいけば各所の不具合がわかるのだろうが。少なくとも箱だしの状態ではまったく問 題はない。どうしても一つ挙げろといわれれば、3点バーストの強度だろうか?ギアを利用している以上、構造は従来の製品より複雑になる。ダイキャストで構 成されている以上、複雑な動きをするキアには負担が大きく、欠損する恐れがある。実際、連続射撃をすると、なんとなく不安にさせるギア音が発生していた。 今後はカスタムパーツで補強用のギアが出てくるのは間違いないのでさほど問題になる事はないだろう。
フォトギャラリー
収集データー
本製品データー | 実銃データー | |
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名 称 | 89式自動小銃 |
89式自動小銃
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メーカー | 株式会社 東京マルイ |
豊和工業
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主要材質 | 合金 合成樹脂 その他 |
鋼鉄及びプラ
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銃身長 | 433mm | 420mm |
全 長 | 916mm | 916mm |
重 量 | 3700g | 3500g |
口 径 | 6mm | 5.56mm |
初 速 | 未測定 | 920m/s |
パワー値 | 0.937J | — |
照準具 | なし | なし |
パワーソース | 電 動 | 装 薬 |
給弾方式 | マガジン給弾方式 | マガジン給弾方式 |
発射速度 | — | — |
発売日 | 不明 | |
撮影日 | 2006年7月14日 | |
購入店 | 通信販売 | |
実売価格 | 31,440円(消費税別) | |
ポイントスター |
★★★★★
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