最近の戦闘系ゲームの発展は凄まじい。PCや家庭用ゲーム機の普及が戦闘系ゲームの需要を押し上げてあるのだろう。特に米国では世界的に大ヒットしている ビックタイトルが何本も製作されている。ただ闇雲に敵を倒していくだけのゲームは少なくなり、戦場の空気とか、其処に生きる兵士達の生き様といった”雰囲 気”をモチーフにして、再現しているゲームが数多くリリースされている。そういったリアル嗜好の中でホンモノの米陸軍が生みの親になる”特異”なゲームが 登場する。
ベースになっているのは陸軍のリクルーティング用プログラム
皆さんはAmerican’s Armyをご存知だろうか?一時日本国内のニュースでも頻繁に取り上げられていた、米陸軍が提供する”戦闘ゲーム”である。もちろん政府が国防予算を振り 分けて製作させるのだから遊びではない。実際の訓練を元にした”業務用シミュレーション”だ。2002年に発表されてから様々なバーションアップを重ね て、リアルな戦場(当然といえば当然ではあるが・・・)をネットワーク上に再現して現在でも300万人以上の正規登録ユーザーがプレイしている。
しかし、ゲームとはっても、陸軍のリクルーティング(新兵勧誘用)ソフトである以上、ゲーム性よりも実戦に則した部分をピックアップする為、ゲームとして は不満と感じる部分なども多かった。一人でヒーローよろしくバンバン敵を倒していく従来の戦闘ゲームとは性質も開発過程も大きく異なるので、とっつき難い のも当然で、実戦に則した”縛り”があった。それでも市販のゲームソフトにはないその”実戦のリアルな縛り”がとても新鮮で、ゆるゆると去年の初めくらい までプレイしていた覚えがある。そして2006年6月、このAmerican’s Armyをベースに、新たにゲーム性を高めて開発された”フル スペクトラム ウォリアー”が完全日本語版としてSEGAから発売される事になった。コアとなるルーチンはそのままに、プラットフォームをプレイステーション2に移しての登場だ。
分隊指揮を扱ったストテラジー
本作品は従来のドンパチゲームではなく、”戦闘戦術”をテーマとしたゲームだ。敵を破壊する行動よりも味方兵士の損耗を防ぎ、自分の率いる部隊に与えられ た戦力(アルファチームとブラボーチーム)を駆使して最大の戦果を得るのがゲーム全体の目標になっている。隊員2名が戦闘不能に陥ると、どんなに戦況が有 利に進んでいてもゲームオーバーとなってしまう。仲間の人命尊重プレイを盛り込んでいるあたりはさすが米陸軍のリクルーティングプログラムをベースにして いる感じだ。いかに隊員を危険に晒さず有利な防御/攻撃ポイントを抑えるか?といった指揮官としての戦術眼が必要になってくる。この”小隊を率いて命令を 遂行する”といった小隊長クラスの緊張感が、この『フル スペクトラム ウォリアー』の醍醐味だといえる。従来の戦争ゲームのように、銃を乱射しながらの突撃は殆どフィーチャーされておらず、移動攻撃や通常射撃といったものに 限られていてプレイヤーや直接照準を合わせて戦うような場面はこのゲームでは再現されていない。自分の指揮するチームに攻撃命令を下して、銃撃戦を有利に 進める為の戦術的環境を整えるのがプレイヤーである指揮官の仕事だ。
プレイヤーが指揮するチームには固有のパラメータを持った隊員が配属されている。それぞれに家族がいたり、学生であったり、と現在のアメリカの複雑な国内 事情を反映しているかのような面々。彼らはゲーム全般を通してプレイヤーの指揮下に入る。ゲーム中には通信機を使って彼らはドンドン喋っている。この会話 が非常に人間くさくて面白い。合言葉はやっぱり”みんなで生きて帰ろう”なのだろうか。アルファチーム、ブラボーチームには個性豊かな兵士達が配属されて いる。
**アルファチーム | |||
メンデス 軍曹 ボディビル大好きの筋肉モリモリ野朗。愛すべきミスターアメリカ。 |
デヴェロー 伍長 大学奨学金制度を利用する為に軍隊へ入隊。恋人がいる。 |
シルバーマン 上等兵 部隊きっての生意気クン。4人兄弟で親父はガンコ。末っ子か? |
シャハディ 二等兵 珍しく裕福な家の出身。国際法に興味があり、菜食主義者。 |
** ブラボーチーム | |||
ウィリアム 軍曹 警察官として勤務していたが、予備役だった為召集。ニューヨーク出身 |
ピッコリ 伍長 歌手を目指すが借金を背負い入隊。エロネタが得意の料理上手 |
シメンスキー 上等兵 軍隊大好き青年。入隊直前に高校から付き合ってた彼女と結婚 |
オータ 二等兵 パソコンが大好きでゲームも得意。入隊訓練で高成績を獲得してしまう |
彼らの生死と任務遂行は、指揮官であるプレイヤーの手に委ねられているのである。ゲームとはいえ、なんとなく高揚感を感じてしまう。さあ、みんな、出撃の時間だ。
多彩な兵士の動き
兵士の挙動は驚くほど多彩だった。歩哨に立っている兵士は周囲警戒をしているし、銃撃を受ければまず遮蔽物に身を隠す。壁を背にして覗き込む仕草もよく再 現されていた。遮蔽物を利用した攻撃でも兵士達の動きはとてもリアル。4人チームである為、攻撃は2人で行い、マガジンチェンジの際に待機していた2人隊 員が支援射撃を行うといった具合だ。当然、敵兵士も同様の動きをするので正面からの攻撃だけでは弾薬のムダ使いとなる。移動、待機、射撃などの際、分隊長 はハンドシグナルを使って部下に指示を出す仕草も見られる。
海外ゲームではお得意の遊び心はこのゲームにも満載だ。チーム内の無線通信は、敵の位置や移動の情報など重要なインフォメーションもあるが、隊員の 愚痴がとても面白い。『オレ死にたくないよ』とか『もうしんどいよ』みたいなものなど豊富に用意されている。特に敵から制圧射撃を受けている時は『くそっ 伏せろ!』や『ここでじっとしていてやられたら最悪だぜ』といった戦争映画のワンシーンを見ているような愚痴は面白い。ただ、ムダな通信が多すぎて肝心な 情報を聞き逃すことも・・・
部隊の装備品や携行してる重火器の ディテールは非常に細かく書き込まれている。ヘルメットにはワッペンが貼られていたり、兵士の手書きと思われる落書きが書かれていたりもする。重火器につ いては分隊指揮がメインの本ゲームではあまり重要なウェイトが置かれていないものの、ディテールは細かく書き上げられていた
デモプレイ
デモプレイは、チュートリアルをやって見た。アルファチームとブラボーチームを主に操作してゲームの操作方法と雰囲気を掴むためのモードだ。始めて 数十分、チュートリアルのクセに妙にのめり込む。始めは複雑な操作方法や、アクションゲームの様な画面の為にチームを思い通り動かす事が出来ずにモジモジ していたが、操作に慣れてくると分隊配置が楽しくて仕方ない。『このビルの陰からなら射界を確保できるな』とか『この建物を迂回する事でチームを安全な位 置に配置できるな』とか、戦場での小隊指揮官の雰囲気を十分に味わう事ができる。とくにプレイして一番感じたのは、”敵軍の配置のリアルさ”である。従来 のゲームならば、プレイヤーにダメージを与えるポジションにNPCを配置してゲームの難易度を上げているのが一般的だが、このゲームでは戦術上必要な所に 敵軍兵士が配置されている。さすが実戦プログラムを元にゲーム化してあるだけの事はある(ゲームである以上、グレネードで戦車を破壊したりする事も出来て しまうが)。チュートリアルの最終章では、味方の分隊が建物に取り残され、味方兵士が負傷しているという”ブラック・ホーク・ダウン”系のシチュエーショ ンで物語は進んでいく。拠点を守る様に配置してある敵部隊を一つ一つ排除していくのは、アルファチームとブラボーチームの相互支援がなければ非常に難し い。ただ、そういった戦術面での基礎知識があれば比較的簡単にクリアーできるのもこのゲームの完成度の高さだと感じている。戦術面での知識に覚えのある人 ならば、ゲームオーバーする事なく進められると思う。ただ、操作の複雑さが気になった。このゲームを一目みた感じではアクション系のゲームに見えてしまう 為、思い込みの操作をついついしてしまう。いつもなら”前進”のキーが分隊呼び出しだったりして、『オッ そっちじゃねーよ』となる場面が何回もあった。
プレイ画面からFPSやアクションゲームに見えてしまう本作品。だがまったく違うジャンルのゲームだ。発売元のジャンル分類では”ミリタリーストラテジー”とあるが、プレイ感は完全に”本格的シミュレーション”だった。戦術知識のある人には特にお勧めする一本だ。
フォトギャラリー
収集データー
内 容 | |
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発売・販売元 | |
商 品 名 | フル スペクトラム ウォリアー |
対応機種 | プレイステーション2 |
ジャンル | ミリタリーストラテジー |
プレイ人数 | 1人 |
対象年齢 | 15歳以上 |
発売日 | 2006年6月29日(木) |
販売価格 | 3,800円(税込 3,990円) |
外部リンク
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