戦争映画

日本人の心をひきつけて止まない戦争映画「男たちの大和」

「男たちの大和」は、故辺見じゅんさんの著書「決定版 男たちの大和」を原作とした第二次世界大戦末期の戦争映画です。戦前の日本が世界に誇った戦艦大和の悲話を、終戦60周年を記念して映画化されました。

劇場公開は2005年12月。セットなどの制作費は25億円がかけられたといわれています。その年の邦画興行収入で第一位という話題作となりました。

多くの人をひきつける映画「男たちの大和」のリアリティ

広島県尾道市に設置されたこの映画のロケセットは、多くの観光客をひきつけることになりました。その経済効果は25億円にも達したといわれています。それほど、この「男たちの大和」が、リアリティを追求したことのあらわれといえるでしょう。

また一部は、かつての軍港であった広島県呉市の大和ミュージアムとして展示されており、多くの来場客の心をひきつけています。この映画のすぐれたところは、そのセットのリアリティだけではありませんでした。この映画にたいして戦争賛美ではという批判も寄せられる一方、戦友や恋人、家族を失うものの悲しみなども重厚に描かれています。

また映画の中では、当時の日本海軍の精神至上主義が批判的に描かれているシーンもあり、バランスの取れた作品になっているといえるのではないでしょうか。

映画「男たちの大和」は、下士官が物語の主役に

「男たちの大和」の主役は、俳優反町隆史さん演じる二等兵曹です。この映画の特徴は、これまでの日本の戦争映画と違って、下士官や一般の視点で描かれていることです。

戦前の日本海軍の将校と下士官の身分差は、雲泥の差であったといわれています。軍艦の艦長ともなれば、音楽の演奏が流れる中で、食事を取ったといわれています。これは、平時であっても海軍が世界中を巡航していたためです。海軍の将校は、平時には、外交官同然として扱われていました。そのため、マナーや語学にすぐれていたのです。

また、日本海軍は英国海軍を模範としており、英国の騎士道の伝統が流れていました。一方で、同じ海軍でも下士官の扱いはまったく違います。下士官は若い下士官にたいして殴るけるの体罰は当然でした。食事も、いわゆる海軍カレーなど粗末なものばかりです。

この「男たちの大和」では、反町隆史さんや中村獅童さん、松山ケンイチさんら主要キャストが下士官ばかりでした。戦艦大和の運命を決めた海軍将校たちは、乗員のほんの一握りにすぎません。

実際の運行と戦闘は、名もなき下士官たちの手によって行われました。そうしたことも、多くの人気を集めた背景となってます。

私達の心をとらえる「残された者の物語」

“「男たちの大和」の大和の見所となっているのは、戦闘シーンそのものというよりも、下士官たちが戦艦大和で過ごした時間と、残された者たちの物語ではないでしょうか。

この映画の回想シーンのひとつに、広島県の厳島神社が登場します。海の神様としてまつられている厳島神社には、戦前も海軍予科練の多くの下士官たちが、お参りに訪れたといわれています。

もちろん、その中には地元広島の出身者も多かったことでしょう。

しかしながら、映画にも登場するように、乗組員の家族や関係者のうちにも、大和出撃後の原爆投下によって、命を奪われた人たちも多くいました。

大和と乗組員の死は無駄死にだったのでしょうか。無駄死にではないと主張したのが、「男たちの大和」で描かれている、長島一茂さん演じる臼淵馨大尉のせりふでした。大和の船内では、菊水作戦について議論になったといわれています。

船内では菊水作戦について「無駄死にだ」と反発する声があがります。それに対して、臼淵馨大尉は「進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚める事が最上の道だ」と諭したといわれています。

もっとも、この言葉が実際に臼淵馨大尉の口から出たのかどうかはわかりません。それでも大和乗組員の決意を現していたと信じています。

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