何となく聞き覚えのあるタイトルだと思います。ロックに詳しい人なら、「ああ、メタリカのONEのPVに使われた映画やね」とか、「ブルーハーツの ラインを越えての歌詞にあったよ」などなど。ブルーハーツは歌詞のみに使われていますが、メタリカのONE公式PVでは半分以上「ジョニーは戦場へ行っ た」のフィルムが使われています。メタリカのプレイの上に平気で「ジョニーは戦場へ行った」台詞が被されています。のちメタリカはONEでグラミー賞を受 賞します
なぜ、ロッカーたちは「ジョニーは戦場へ行った」(以下ジョニー、、)を自分の作品に取り込むのか?それは「ジョニー、、」がとても分かりやすい 「反戦」のシンボルだからなのです。「ジョニー、、」をとりあげることで自分や、作品の立ち位置を明確にできるのはないでしょうか?
少し脱線しますが、逆にロックの定番曲を映画のテーマに使い、よりメッセージ性を強く表現することもあります。フルメタルジャケットにローリングス トーンズの「黒くぬれ!」や地獄の黙示録にドアーズの「ジ・エンド」などに見受けられます。ロックが戦争映画の表現に影響を受けているのと同じように、戦 争映画の演出にもロックの影響を受けています。
どうやって「ジョニー、、、」が反戦シンボルになり得たのか?原作小説「ジョニーは銃をとった」を原作者ドルトン・トランボが出版したのが1939 年。ドイツがポーランドに侵攻、フランス・イギリスがドイツに宣戦布告した年でした。ヒットラーが自殺した1945年発禁となりました。戦後復刊されましたが、朝鮮戦争が始まると再び発禁となります。
いわばアメリカ政府が「反戦文学」のお墨付きをあたえたようなものでした。そしてベトナム戦争最中、ドルト ン・トランボ自身が脚本を書き、メガホンを取り映画化されました。
ジョニーは戦場へ行った のあらすじ
第1次世界大戦に主人公ジョーは徴兵されドイツ兵の死体を埋葬中に砲撃を受けてしまう。両腕、両足を無くし顔面にも負傷を負い、目、耳、鼻、舌、全 て無くしてしまう。病院では(407号)として治療を受けるのですが、軍医の誤診により「意識すらない植物人間」としての延命処置でした。触覚意外の全て の感覚を奪われたジョーのできる事といえば、過去の記憶をたどるしかありませんでした。
時間の経過も分かないまま過ごす日々。食事、排便など生物としての最低限の行為すら奪われ、生存しているだけの存在。他人とコミニケーションをとろ うとするジョーですが、軍医に痙攣と診断され大量の鎮静剤剤を投与され意識が混濁し、「思い」や、「思考」までとりあげられてしまいます。
唯一自分の意志で動かせる、首と頭を使いモールス信号で会話を試みるジョー。はたして・・・
ジョニーは戦場へ行った のみどころ
やはり、原作、脚本、監督、のドルトンの演出の巧さです。現在進行のシーンではモノクロで撮影され、ジョーの回想シーンでは鮮やかやカラーで撮影されています。ジョーにとっては現実こそがあいまいな世界で、記憶こそが確固たる世界なのです。
タイトルもメッセージがこめられています。
第1次世界大戦時の志願兵募集キャッチコピーがJhonny get your gun(ジョニーよ銃をとれ)でした。それに対してのドルトンの答えが、Jhonny got his gun(ジョニーは銃をとった)です。邦題の「ジョニーは戦場へ行った」はドルトンは無関係だと思いますが、よく考えられたタイトルですね。
これ以上の絶望感は他の映画では味わえません。絶望を味わいたければこの映画がお勧めです。
最後にドルトンについて少しだけ。戦後、マッカーシズム(赤狩り)がハリウッドに吹き荒れました。大衆娯楽の映画を共産主義のプロバガンダに使わせ 無いねらいがあったようです。
自由の国、アメリカで思想検閲があることに矛盾を感じた人たちは、これに抵抗しました。当時のハリウッド著名人のうち「共産主義者ではない」と証言を拒んだ10人を「ハリウッドテン」と呼び、もちろんドルトンも数えられています。結局ドルトンは実刑をうけ、メキシコに国外追放 されてしまいます。
メキシコでペンネームを使い書いた脚本が「ローマの休日」でした。
タイトル |
ジョニーは戦場へ行った オリジナルタイトル:Jhonny got his gun |
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監 督 | ドルトン・トランボ |
出 演 | ティモシー・ボトムズ ドナルド・サザーランド |
製作・配給会社 | |
公式サイト | 公式ウェブサイトの情報は見つかりませんでした。 |
公 開 日 | 1973年4月7日 |
上映時間 | 112分 |
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