戦争映画

「ランボーⅠ」はただのアクション映画ではない。メッセージ性の高い戦争映画だ!

「ランボーⅠ」はただのアクション映画ではない。メッセージ性の高い戦争映画だ!

「ランボー」シリーズを、単純なアクション映画と思っている人は結構多いのではないでしょうか。しかし特に第1作目は、ジョン・ランボーという男を通して、ベトナム帰還兵の苦悩を見せてくれる戦争映画だと言えます。映画好きなら一度は見ているであろうこの作品、戦争映画であるという観点で見直してみるのはいかがでしょうか。

ベトナム戦争はアメリカに大きな傷を残しました。帰還兵は国のために働いたというのに国民から責められ、帰国後は職にありつくのさえ大変な状況に置かれてしまったのです。

ベトナム帰還兵の悲しみと、「ランボー」の悲劇のきっかけである枯れ葉剤とは?

ベトナム戦争で、アメリカ軍が苦戦したのが、ジャングルでのゲリラ戦でした。ベトナム兵はジャングルでのゲリラ戦を得意としており、この戦い方に不慣れだったアメリカ軍は追い詰められていきます。

そこでアメリカ軍がとった作戦が、枯れ葉剤の撒布でした。ジャングルを枯らす薬を大量に撒いて、ゲリラ戦を行えないようにしたのです。しかし、当時はよく知られていませんでしたが、枯れ葉剤には大変な有害性がありました。「ベトちゃん・ドクちゃん」のように障害を持って生まれる子供が増えてしまったり、戦争が終わったあともなおベトナムの人々の健康に影響を与えているのです。撒布したアメリカ兵も影響を受け、癌などにかかってしまう人がいました。

そして「ランボー」の悲劇の始まりも、枯れ葉剤と言えるのです。

戦うランボーはかっこいい…しかし、せつないストーリー

ベトナム帰還兵ジョン・ランボーは、戦友に会いに出掛けます。しかし戦友は、枯れ葉剤の影響で癌にかかり、亡くなっていました。ランボーは悲しみの中、戦友の家をあとにします。ランボーがウキウキとしていただけに、亡くなっていたことは哀れでたまりません。

食事を食べるためにトボトボと街を歩いていたランボーは、保安官ティーズルに呼び止められました。問題を起こしそうな人間とみなされ、保安官事務所へ連行されてしまいます。

ランボーは保安官事務所で、高圧的な扱いを受け、拷問じみた嫌がらせをされます。ベトナム戦争でとらわれの身になったときに受けた拷問がフラッシュバックし、パニックになります。

我を忘れたランボーはその場にいた保安官助手たちを素手で倒し、ナイフ一本を持って事務所を脱走し、山中へ向かいます。

ランボーは、自分を追い、射殺しようとした保安官助手から身を守ろうとしたところ、相手が死んでしまいます。事故だと主張するランボーの言い分を聞かず、ティーズルたちはランボーに発砲します。これをきっかけに、ランボーは保安官たちに反撃を始めます。

グリーンベレーとしてベトナム戦争で戦っていたときに身につけた戦術と、たった1本のナイフを駆使し、ランボーは保安官たちを仕留めていきます。ランボーと保安官たちの戦いは激化し、戦いの場は山中に留まらず、街中を巻き込んでいきます。これが戦争映画でなくてなんなのでしょう。

戦争映画としての、「ランボー」のみどころ

ランボーⅠ

ランボーは、映画の中で、追い詰められた顔、悲しそうな顔、必死の顔など、つらそうな表情ばかり浮かべています。しかしランボーが唯一笑顔のシーンがあります。それは映画の冒頭、ウキウキと戦友の家を訪ねているシーンです。そしてこのとき、空は晴れ渡っています。

しかし、戦友の死を聞き、トボトボと歩き始めた頃から、曇天になります。このまま、陰鬱な曇り空の中で映画は進んでいきます。ランボーの心情に合わせた天候を選んで撮影しているのです。ここだけでも、「ランボー」が単純なアクション映画ではなく、帰還兵の悲しみを描こうとした戦争映画であることがわかります。

ランボーは、保安官たちから仕掛けられた「戦争」において、相手を傷付けはしても、決して殺しはしません。怒りにまかせて人を殺しまくる映画ではありません。あくまでも、やられたから、生き延びるために反撃しています。にもかかわらず、作中で人々はランボーをののしり、殺してやる、と息巻くのです。アメリカ軍だって、ベトナム戦争で、「正義のため」に戦ったはずなのです。戦えと国から言われたから、任務を遂行しただけ。それなのに、国へ帰ったら非難を浴びせられる。ランボーは山中での「戦争」で、ベトナム戦争のときと同じような孤独を味わっているのかもしれません。

映画のラストの、ランボーの悲痛な叫びは胸に迫ります。

軍人だった頃は、戦場でヘリを飛ばし、戦車を動かし、高価な武器を扱っていたこと。けれど、国へ帰ってみれば、駐車係の仕事すらないこと。箱に仕掛けられた爆弾で、戦友が目の前で死に、飛び散った体が自分にべっとりと貼り付いたこと……
この映画は、ランボーにこの苦しみを叫ばせるために作られたのではないでしょうか。ほとんどしゃべらず、「ふんっ」とか「ふむむっ」といった声だけ出しているシーンの多い、無口なランボーが、大きな声で泣き叫ぶからこそ、観客の涙を誘うのでしょう。

この戦争映画の原題は「 First Blood 」です。最初の血、という意味から派生して、「先手」という軍事用語でもあります。先に手を出したのはどちらか。この映画でも、ランボーは、「保安官たちが仕掛けた戦争だから、俺は悪くない」とかつての上官に話します。しかし、先手がどちらであっても、反撃から戦争は始まってしまいます。戦争というものの難しいところのひとつでしょう。

原作では射殺されたランボーですが、映画では生き残ります。そしてやるせない瞳を観客に向け、連行されていきます。国へ帰ってから職もなく、どう生きていいのかわからないまま、犯罪者となった、哀れでならないランボー。

しかし、シリーズ第2作目では生き生きと、捕虜になったアメリカ兵を助けるべくベトナムへ向かいます。第1作目とはまったく違うテイストになった第2作目。第2作目のインパクトで、第1作目の哀愁が忘れ去られてしまった感はありますが、悲しみのランボーの生き生きとした姿を見せてもらえたので、満足できます。

 

「ランボー」シリーズでは、第2作目しか見ていないという声を時々耳にするのですが、第1作目も是非見ていただきたいと思います。そして「ランボー」を戦争映画ではなくアクション映画だと思っていた方には、今一度見直していただき、この映画のメッセージを味わい直してほしいと思います。

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