アメリカ海軍の白い制服がとても眩しい戦争映画「 愛と青春の旅立ち 」

アメリカ海軍の白い制服がとても眩しい戦争映画「 愛と青春の旅立ち 」

「愛と青春の旅立ち」は、1982年にアメリカで公開された。実際の訓練施設はフロリダ州にあるが、撮影の許可が下りずワシントン州ポートタウンゼ ンドにある、当時は使われていなかった軍の施設で撮影された。映画のストーリー上の舞台は、ワシント州シアトル、ポートタウンゼンドそして、フィリピンと なっている。実際の訓練施設はフロリダ州にあるが、撮影の許可が下りず、ワシントン州ポートタウンゼンドにある当時は使われていなかった軍の施設で撮影さ れた。

日本公開は翌年の1983年。ヘラルド映画文庫の一冊としてノベライズが出版されていた。小説では13歳の時に母が自殺し、父に会いに行く時に、初 めて乗った飛行機で、将来パイロットになる決心をするところから物語は始まる。海軍の兵曹だった父は、酒と女が好きな男で、そんな夫を嘆いた母が睡眠薬で 自殺をし、倒れている姿を学校帰りのザックが見つけてしまう。こうした過去をキチッと書いている。このことが、主人公ザックの人格形成に大きな影を落とし ていることを、まず暗示している。このザックの人格形成と愛の問題、そして軍隊との絡みが映画の主題となっていく。

テイラー・ハックフォードは「黙秘」の監督。代表作にカリブの熱い夜、白夜、プルーフ・オブ・ライフ、レイなどがある。アカデミー受賞歴は、アカデ ミー賞助演男優賞、歌曲賞に輝いた。また、ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズが歌った主題歌『愛と青春の旅だち』がアカデミー歌曲賞を受賞している。

愛と青春の旅立ち のあらすじ

シアトルに住む、青年ザック・メイヨ(リチャード・ギア)は、不甲斐ない父(ロバート・ロッジア)と2人暮らしだった。パイロットになることが夢 だったザックは、父の反対を押し切って海軍士官学校に入学した。鬼軍曹フォーリー(ルイス・ゴセット・Jr.)のもと、ザックは13週間の過酷な訓練を受 け始める。

訓練開始から数週間後、士官候補生たちは地元の盛り場へ。そこでザックは、町工場で働く女性ポーラ(デブラ・ウィンガー)と出会い恋に落ちる。この物語も並列して進んでいく。

ザックは基地内に協力者を作り、新品のブーツやベルトのバックルを訓練生たちに高値で売り付けることで金を稼いでいたが、フォーリーにバレてしま う。任意除隊申請を迫るフォーリーのザックに対するしごきは激しくなる。成績は良いが、要領の良いザックに注意を向けていたフォーリーは「戦場でお前のよ うな利己的なやつに誰が命を預けるか?」と言う。鬼軍曹はザックの不正を嫌って、痛めつけて音をあげさせてやると思うが、彼は音をあげない。教官は不思議 に思っていた。「自主退校しろ」と迫って、やっと聞き出したザックの言葉があった。俺はどこにも行くところが無いんだ」ザックの真実は絶望的に孤独な若者 だったということだった。

映画は、ザックと町工場の娘とのロマンスをもう一つのプロットして、愛の問題も考える。士官学校の厳しい訓練の描写は、教官のザックに対する父性愛 のようなものも表現しているかのようである。ザックの親友は愛のもつれで挫折し、自殺する。そうしたプロセスを経て、ポーラの掛け値なしの愛にも気付き、 ザックは自らのトラウマを克服できるのだ。そして、有名なあのラストシーンで、ザックはポーラを工場から抱きかかえて彼女の愛を称えるのだ。このシーン で、この映画は「青春映画」の名作となった。

愛と青春の旅立ち のみどころ

ザックは基地内に協力者を作り、新品のブーツやベルトのバックルを訓練生たちに高値で売り付けることで金を稼いでいたが、ふとした事でフォーリーにバレてしまう。

任意除隊申請を迫るフォーリーのザックに対するしごきは激しい。フォーリーは、ザックのする不正が嫌いで「要領よく卒業するつもりだろうが そうは させるか。」と思っていたものの、彼はなかなかギブアップしない。鬼軍曹フォーリーは、成績も良いが、それ以上に要領もよく、他人に依存せず、人を信頼す る気さえない。他人と接触するときは、利用するときだけ。そういうザックの背景にあるのは、母の自死というトラウマがあり、母の無償の愛というものを受け ないまま育ってきてしまったわけだが、そのことを鬼軍曹は知らない。

軍曹は言う。「戦場でお前のような利己的なやつに、誰が命を預けるか?」と……。

ここで、この映画と戦場というフレーズが、重なってくる。戦場で は、少なくともリーダーであるべき人の資格は、命を預けるに値する資質というものが必要だと言っているのだろう。つまり、利己的であっては駄目だというこ と。部下を思いやる包容力もなくてはならない。つまり、リーダーは、無条件に部下の命を預かる訳なのだから、利己主義で自分のことしか考えない人物では困 るのだ。それでは組織が混乱するし、常に緊急時対応を取らなければならない軍隊で、部下のことより己を優先する上官では、部下の不満と暴走が目に見えるよ うだ。無論、不正などしてはならないのだろうし、常に、客観的冷静な判断が求められるのであろう。

鬼軍曹は、そのことをザックに教えようとしたのではないだろうか。けれど、それには愛の力が必要なのだ。愛されず、孤独で生きてきた人間は、愛し方が分からない。まして、最愛の母親に自死されトラウマを抱えた人間の心を癒すのには、それ以上の愛の力が必要なのだろう。

鬼軍曹フーォリーは、不正の責任と、エゴイストのザックが軍隊に不向きと「自主退校しろ」と迫って追い詰めていった時、やっとザックの口から、思わず本音が飛び出した。「俺はどこにも行くところが無いんだ」ザックは、叫んだ。これが彼をここまで強くしていた原因だった。

結局、曲がった道は徹底的に正させる…そうした鬼軍曹はザックに父親的愛を与えたことになったのだろうか。そして、もうひとつのプロットを生きる町 工場で働く女性ポーラ(デブラ・ウィンガー)と出会いと恋は、ボーラのひたむきの愛によって、ザックの心のトラウマを癒したと言えるのだろうか。

こうして、ザックは人の心というのを取り戻し、他者への理解ができる士官候補生として、未来に羽ばたいていくのだった。

この映画は、軍隊、及び戦争という苛酷な状況が、それゆえに正常な心のバランスを保持する人物を必要としているかということを、鬼軍曹を通じて伝えたかったのではないだろうか。

エゴイストのリーダー程、始末が悪い存在はないだろう。そういう人物は、部下を危険に晒し、全滅させる危うささえ秘めている。そういう意味からも、 軍隊における厳しい規律は、設定されているのだ。それを乗り越えられる者だけが、リーダーの資格があるのだという監督からのメッセージにも思える。

この物語は「青春の愛の物語」という見方もあるが、こころのトラウマは、自ら乗り越えなければ先へは進めない…未来は得られないという現実の苛酷さをも訴えているのではなかろうか。

原題に、そのヒントが秘められているのかもしれない。

タイトル 愛と青春の旅立ち
オリジナルタイトル:An Officer and a Gentleman
監  督 テイラー・ハックフォード
出  演 リチャード・ギア、デブラ・ウィンガー、ルイス・ゴセット、リサ・ブラント、リサ・アイルバッハー、ルイス ゴセットJr.ほか。
製作・配給会社 パラマウントピクチャーズ
公式サイト 公式ウェブサイトの情報は見つかりませんでした。
公 開 日 1982年8月13日
上映時間 124分
著作権情報 すべての映像及び画像の著作権はすべて著作者に帰属します。
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