フルメタル・ジャケットは、ベトナム戦争下の若い兵士の葛藤を描いたチョイ切れ戦争映画だ

20世紀後半に行なわれたベトナム戦争下の海兵隊員の訓練と生活、そしてその状況下に生きる兵士同士の葛藤を描いた戦争映画が今回ご紹介する「フル メタル・ジャケット」です。ベトナム戦争には多くの若者が戦場に借り出され、兵士達の平均年齢はとても若く、実に19歳だったと言われています。

フルメタル・ジャケットではアメリカ海兵隊への入隊から部隊の配属へとストーリーは進んでいきます。アメリカ海兵隊は、敵前上陸作戦の中心となる部 隊で、その中でも第7海兵隊は、戦闘技術と兵士の士気では世界最強と言われる程の精鋭中の精鋭です。

精鋭部隊を作り上げるために若い兵士たちを徹底的に鍛えあ げる訓練は、通常の訓練とは一線を画した過酷の一語に尽きます。ハスフォード自身が元海兵隊であったことから、軍隊内部の情景から訓練にいたるまで、細部に渡ってリアルに描きる事に成功しています。

フルメタル・ジャケットでは、訓練で若い兵隊をいじめた上官は、いじめられていた太めの兵士にトイレで射殺されます が、実際の戦場では背後から撃たれるなどして殺害されたケースもまれに発生しています。ベトナム戦争、ひいては戦争の裏側をリアルに映画に収めたと言えるでしょう。

あまり公にはされていませんが、フルメタル・ジャケットはグスタフ・ハスフォードの原作である「ショートタイマーズ」をベースにして作られてい ます。

フルメタル・ジャケット のあらすじ

ベトナム戦争時、強さを求める若者の中には海兵隊に志願する者も珍しくはなかった。マシュー・モーディーン扮するジョーカーも、そんなうちの一人だった。

ジョ-カーとは、入隊初日に教官の言葉を揶揄したことから彼に付けられた恥ずべきあだ名だった。海兵の一員となると全ての海兵隊員が兄弟となる。その前段 階にある彼等訓練兵は、教官から「蛆虫」と呼ばれながらも日々の厳しい訓練に耐えていた。

そんなある日、過酷な訓練による脱落者(レナード)が出てしま う。やがて彼は、部隊全員の足を引くことになって行く。連帯責任を求められる部隊では、一人のミスが全員を襲う。落ちこぼれたレナードは、全部隊の憎しみ を一身に受けることになるのだった。集団による暴行を受けた彼は、いつしか精神を病んで行く。銃の扱いにだけは一流以上の結果を見せるレナードは、卒業式 を前日に控えた夜に教官を射殺して自らも命を絶ってしまう。

その後戦地に配属されたジョーカーは、戦場記者でありながらもベトナム戦争の闇に巻き込まれて 行くのだった。

フルメタル・ジャケット のみどころ

活力に溢れた若者の「生の時代」を、戦争という形の無い凶器が損ねてしまう状況をリアルに表現した戦争映画が「フルメタル・ジャケット」ある。ス トーリーは海兵隊と言う特殊な世界を中心に描かれているのだが、国を守るために組織された戦闘部隊であるが故に、受け入れられない暴力が既に蔓延ってい る。国同士の戦いに対比して、味方同士でさえ個人の戦いが存在することにサーキャズムを感じさせる。レナードの教育係として任命されたジョーカーは、最後 まで彼とのコミュニケーションに悩む。たった人間一人も理解する事ができないのに、目的も意義も異なる国同士が理解し合おうとすることのナンセンスさを痛 烈に訴えてくるのを感じる事ができる。

この映画の見どころは、前半は訓練部隊のシーンで単調なものだが、後半からはベトナム戦争では戦闘シーンが中心となる。ベトナム戦争映画ではあまり 表現される事のない市街地戦のシーンもあり、派手な戦闘シーンを楽しむ事ができる。小火器しか持たないベトコンに、M-60軽機関銃やM-16小銃で雨の ように弾薬を浴びせ、戦車砲で建物もろともフッとばす。これが、元祖アメリカの戦争映画である。

しかし、このフルメタル・ジャケットに登場するあらゆる登場人物は、すべて頭のネジが欠落してしまっているように表現されている。初めは正常だった 若者も、訓練と環境に馴染むことで、同じように狂気に支配されて、頭のネジが無くなってしまう。皆が狂気に支配されるのは、人間の本質的な狂気などではな く、過酷な訓練の成果である事を祈るばかりだ。

このフルメタル・ジャケットという戦争映画は、この人間の得体の知れない狂気を、非常に上手に映像に収める 事に成功している戦争映画ではないだろうか。

タイトル フルメタル・ジャケット
オリジナルタイトル:Full Metal Jacket
監  督 スタンリー・キューブリック
出  演 マシュー・モディーン ヴィンセント・ドノフリオ R・リー・アーメイ
製作・配給会社 ワーナー・ブラザーズ
公式サイト 公式ウェブサイトの情報は見つかりませんでした。
公 開 日 1988年3月19日
上映時間 116分
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